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S-3 Class
Scout/Courier |
S-3型偵察/連絡艦 |
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MEGA TRAVELLER |
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Science -Fiction Adventure CG softs: Shade8 & Poser6
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■■■ 1 ■■■ 自動反重力リフターが運んできた一つ目の4t標準コンテナには,グリッスン星域からの補助金で購入されたベンダー星系向けのサイバネティクス部品が詰め込まれていた.もう一つの4t標準コンテナには,ここマラスタン星系で開発された風土病ワクチンが,流行前に送り届けられるように大量に詰め込まれていた.
マラスタン星系は,帝国制限区域に指定されており,大規模な移民が厳しく制限されていた.偵察局は,この惑星を帝国中から採取してきた植物のショーケースとして利用してきた.一方で,第5次辺境戦争直前,埋蔵鉱物資源を巡り傭兵部隊による企業戦争が勃発し,帝国軍の内政干渉を招いた歴史がある. ケッシュ・スミアン(Kkessh Smianr)はS-3型偵察艦の艦尾船倉で,それらのコンテナの積み込みに立ち会っていた.風土病ワクチンは青色の高精度温度管理コンテナに収められており,管理が非常に微妙な代物だった.ケッシュは,コンテナの温度管理プログラムの作動状況やパワーユニットの出力状況を念入りに確認した.グリーンのインジゲーターランプに満足すると,コンテナを船倉に固定する機械式ロックをセットし,再度,ロックの状況を指差確認した. 荷役会社の男が黄色の宙港内専用の反重力バイクで横付けしてきて,ケッシュに受け取りサインを貰うために,ポケットの中から携帯端末を差し出した.ケッシュは,携帯端末を受け取ると受領手続きのために画面をスクロールさせて内容のチェックを始めた.
最後の画面にある免責条項を確認している時,甲高い音を立てて,くたびれたコバルト色のエアラフトがドック内に侵入してきた.エアラフトはケッシュ達の近くに停止した.中から体格のよい男が2人降り立った.続いて小男が1人降り立つ.彼らはエアラフトの後部に回ると次々に荷物を降ろし始めた. 最後に降り立ったヴァルグル人の見覚えのある毛並みをみた時,ケッシュは顔をしかめた.200日ほど前酷い目に合わされた記憶が頭をよぎった. 「久しぶりだね,ケッシュ局員」 ケッシュは暫く間をおいて,努めて冷静な口調で答えた. 「小さい艦ですが,艦長と敬称をつけて呼んで頂くのが局のルールかと思いますが.」 「相変わらず口が減らないな.」 ヴァルグル人は,荷役会社の男の方を向くと丁寧な口調で指示を出した. 「悪いが君,これらのコンテナは引きとってくれないかな.この艦は行き先が変更になった.」 ヴァルグル人は,スーツの内ポケットから,小さなプラスチックカードを取り出し,荷役会社の男が次に相談に行くべき場所をてきぱきと指示した. 荷役会社の男が反重力リフターとともに去るとヴァルグル人が尋ねた. 「では艦長,よろしければ乗艦の許可が頂きたいのですが.」 ケッシュは挑発に乗らず,事務的な口調で答えた. 「あなたの身分を証明するカードを示して下さい.」
■■■ 2 ■■■ ヴァルグル人は,艦内の共用室で任務の内容を説明すると去っていった.任務内容は,マラスタン星系からHarvosette星系経由でペンクウォー星系に補給に向かった偵察艦が行方不明となったため,至急当該星系に赴き捜索と原因究明を実施せよというものだった.ペンクウォー星系は,テクノロジーレベルが低く,偵察局が現地文化の研究のために封鎖しており,レッドゾーンに指定されていた. ペンクウォー星系の文化を調査するために偵察局は,スピンワード宙域でも5指に入る,グリッスン惑星学大学(GLIPS)に研究を委託しており,現地に観察キャンプを設置していた.ペンクウォー星系は,ルーニオン星域に属するが,ここの調査支援は,グリッスン惑星学大学と密接な関係にある偵察局のグリッスン星域支部が行っていた. 捜索には局の偵察艦3隻が投入されていた. Spirelle星系,Persephone星系,そしてケッシュのS-446-50509は,捜索隊の隊長であるハンチ氏を乗せてペンクウォー星系へと向かっていた.この他たまたまHarvosette星系にいた予備役の偵察艦がそれぞれSmoug星系とOlympia星系に調査に派遣されていた.
ケッシュの偵察艦は,Harvosette星系からペンクウォー星系に向かうジャンプ空間にいた.艦内時間1800時.艦内の全員が共用室に顔を揃えて夕食を採っていた.少し辛めのリゾットに,サラダというあっさりしたメニューだった.急な出港だったため理想的な食事を用意している時間がなく,一日置きに同じメニューを出しているが,我慢してもらうしかなかった. 「私の考えでは,行方不明の偵察艦はペンクウォー星系のどこかにいると思う.Spirelle星系とPersephone星系にも偵察艦を派遣したが,こちらはあくまで確認のためだ.」 食事中話つづけているのは,捜索隊長である管理課グリッスン星域企画第5課長のハンチ氏.言語,接触,コンピューターに堪能な官僚で,この重大事件の捜索の陣頭指揮をとることになった.歳は50才.もう現場に出てくるような歳ではないが,どうも全てにおいて自分で確かめないと気がすまない性格らしい.
「艦長,そこのガラソースをとってくれないか.私には少し薄味のようだ.」 ベテランのメイスが珍しく声を発した.抗老化材の効果でまだ40歳程度にしかみえないが,メイスは既に62歳.鍛え上げた大きな男で,技術部のエンジニアの肩書きだが,とてもそうは見えない.管理職への昇進を何度も断り,長い間,局で戦闘的な任務をこなしてきたとの噂だ.もともと捜索チームの一員ではなが,ヴァルグル人がメンバーに加えたらしい.
「僕がとるよ.でもこれ既に十分辛いんだけどね.」 ガラソースをテーブル越しに投げた男がスラーブ.小柄で黒髪の陽気な34歳.コンピューターとエレクトロニクスの自称プロフェッションル.典型的な技術部門の人間だった.彼は工学的な見地からの調査を担当する.どの程度の技術力かはよくわからないが,言動をみる限りハンチ隊長ほどの能力ではないようにみえた.
そして,ケッシュだ.18で高校を卒業し名門モーラ工科大学に入学したが,スリットボールのサークルで当時交際していた浮気ものの男を,ものの見事に殴り倒してしまい,停学処分を食ってしまった.結果,奨学金を打ち切られて,大学をドロップアウトする羽目になった.人生を踏み外した勢いで偵察局に入隊し,今は偵察艦の艦長をしている.
ハンチ氏が一息つき水を飲んだ.その瞬間を見計らってケッシュは席をたった. 「中座して失礼しますが,探査プローブの整備の途中ですので,申し訳ありません.」 ハンチ氏の表情が曇ったが,スラーブが同時に立ち上がり真剣な表情で分解整備の助力を申し出た.ケッシュは快く申し出を受けて,スラーブとともにハンチ氏の演説から逃れることに成功した.
■■■ 3 ■■■ 偵察艦がジャンプ空間から抜け出ると同時に,ケッシュは,規則通りアクティブEMSを作動させて周囲の障害物を確認した.危険なものは何もない.ビーコンと星座から,恒星系における座標を確認,相対速度の算出が終わると,通常航行プログラムを立ち上げ,予めセットしておいた航路を呼び出した.ジャンプアウト誤差が出ているため航路修正を実施した.目標まで2G加速,2G減速の単純な航路だ.自動航行開始の実行を選択するとコンピューターが音声で再度,復唱をもとめてきた. 「実行承認.」 艦の核融合パワーブラントが出力を上げ,そこからエネルギー供給を受けたスラスタープレートが艦を高速で押し出した.立体航宙図に映し出された艦の予定進路がスケールアップされ,それぞれの進路変更点への到着時刻を表示した.ケッシュは艦内オール回線で航路情報を告げた. 「こちら艦長です.本艦はただ今,ペンクウォー星系に到着し,第1惑星に向けて加速を開始しました.以上.」 ケッシュは,まずP-EMSをモニター画面に呼び出し,救難信号の有無を確かめた.残念ながら,信号はまったく受信できない. 本来ならこの星系を現住に封鎖しているはずの小型護衛艦や護衛駆逐艦の姿もみえなかった.第5次辺境戦争終了後,ようやく小型護衛艦2隻が配置され封鎖再開が高らかに宣言されたが,直ぐに1隻体制になり,残りの1隻も緊急任務で移動したきりであった.治安維持と出没する海賊掃討等の優先すべき任務のために,封鎖は途切れがちであった.
ケッシュは,航宙図作成用プローブの内臓制御プログラムにアクセスした.ペンクウォー星系には惑星が2個,アステロイドベルトが2個あるが,高価なプローブはそうそうは無駄に消費できない.とりあえずはプローブ1基に第2惑星をスキャンする航路を設定して,ミサイルラックから打ち出した. 床面ハッチを潜り抜けて,ハンチ隊長が操縦席にはいってきた. 「状況は?」 「今のところまったく手がかりはありません.トランスポンダの信号らしきものもありません.現在,頂いた捜索計画に従い探査プローブを射出したところです.本艦は,とりあえずグリッスン惑星学大学の設置したベースキャンプに向かいます.」 ハンチ隊長は,ケッシュの答えを無視して高圧的に指示を出した. 「プローブ1号の航法データを出せ.」 ハンチ隊長は,どうも細かいところまで自分で指示を出して,確認しなければ気がすまないタイプのようだった. 彼は,副操縦席に座り込むと,1時間以上もモニターを見ながら細かく指示を発していた.一方で,脂ぎった指でベタヘダと操縦機器を触って汚したり,ケッシュの肩に手を乗せたりするので,好きになれないタイプであることが次第に明らかとなった. 「違う.それじゃ駄目だ.」 それこそモニター上での手順一つ,操作一つにいたるまで異常に気になる神経の細かいタイプのようだった.これまでの部下達はさぞかし大変だったことだろう. ハンチ隊長は暫くすると満足して自分の共用室に引き上げた.探査プローブが全く成果を上げぬまま,偵察艦は,惑星に接近した.ケッシュは,捜索計画に基づき衛星軌道から高精度地図作成プローブを射出した.プローブは軌道を周回しながら惑星全域をレーダー及び光学・赤外線カメラで走査して,高精度の地図情報を送信してくれるはずであった.
ケッシュはグリッスン惑星学大学ベースキャンプの惑星上の座標を確認すると,大気圏への突入計算を始めた.ベースキャンプは観察対象である原住民への文化汚染をさけるために,大渓谷にある岩山の頂上付近に設けられていた.そこまでに至る5の変進ポイントを設定し,コンピューターとともに速度,高度,進路を計算した.コンピューターの計算とケッシュの暗算はほぼ一致した. ペンクウォーは,熱帯気候の湿気と霧の多い沼地の惑星だった. ベースキャンプに設置されている簡易誘導装置にアクセスすると,進入航路を確認して大気圏突入を開始した.視界は良好であったため,ケッシュは手動で操縦桿を握った.偵察艦の艦長達は,皆,自ら操縦桿を握るのを好む傾向にある.艦は,ぐんぐん高度を下げ谷の一つと交差する位置に出た. ベースキャンプから発せられた青いレーザービーコンの光線が目視でも視認できた.航法モニター上で艦が最後の変進ポイントに達したことを確認すると,艦を大きく右に旋回させ,着陸脚を出した.
衝突防止装置が周囲の岩山を捉えて鋭くアラーム音を発した.偵察艦はレーザービーコンに従いベースキャンプの着陸床へ接近し,ゆっくりと接地した. キャンプは,山頂付近に張り出した50mほどのテラスに設けられていた.偵察艦が降りるとテラスは一挙に手狭となった.キャンプには4t標準コンテナを8つ並べて改造した事務所兼居住区が設けられていた.同じく4t標準コンテナに装備された着陸誘導用のレーザービーコンがテラスの隅の高台に置かれていた.その他には,くたびれたエアラフトが1台と反重力バイクが2台,基地の設営に使われた反重力リフターが1台あった.
■■■ 4 ■■■ キャンプにはリーダーの教授の他に,ポストドクターの研究員が1人,大学院生3人が寝起きしていた.教授は長年この惑星の調査に従事してきており,なんでも画期的な幾つかの発見をしているらしい.
偵察艦の共用室で聞き取り調査が行われたが,行方不明の偵察艦は補給に訪れてはいないとのことだった.最後にHarvosette星系からジャンプしていることは確かであるから,ジャンプ航法ミスかジャンプ機器ミスが原因と推定された. 前者は,超空間における航法ミスが原因で生じるもので,船の航宙士が誤ったジャンプ航路を指定したために生じる.船は,出発星系か出現惑系の質量ポイント,もしくは放浪惑星,彗星の近くに出現することとなる.アステロイドベルトを2個も抱えるこの星系では,探すべき質量ポイントは膨大であるし,未知の質量ポイント,暗礁もあるはずだ. ただしこうしたミスの場合,船に危険は少なく,音信を絶つような損傷が生じることはないはずだから,星系から距離がある,信号の届かない距離にある地点に出現した可能性が高かった. 後者は,より危険なもので,どこに出現するのかは全くわからない.この場合は,探査のすべがなかった. とりあえず,偵察艦の共用室に立体航宙儀が持ち込まれ,これまでに報告された既往のジャンプミスから幾つかの航法ミスのシナリオが想定され,モンテカルロシミュレーションにより,出現する可能性の高い質量ポイントが絞られた.これに基づき限られた探査プローブで探査する最適航路が算出された.残る探査プローブの数は6基だが,航続距離の関係からとても全てをまわることはできない.偵察艦も小ジャンプを繰り返しながらの長帳場となりそうだった. 事態が,急変したのは4日後のことだった.大嵐の後,高精度地図作成プローブが不審な形状物体を画像で識別し,画像を送信してきた.ベースキャンプから北北東に約1000kmの位置にある,直径120kmのカルデラ火山の中で,外輪山の内側のこの星では珍しい砂漠化した地形だった.明らかに人工物,それも砂に埋まった偵察艦であった.どうやらここに来る途中に墜落したらしい. 2日前に作成した画像では,金属分を多く含んだ砂が覆っていたが大嵐で吹き流されたようだった.リーダーのハンチは,満面に笑みを浮かべ満足気に頷くと探査チームを派遣することに決めた.第1報を知らせるジャンプミサイルが打ち出された. グリッスン惑星学大学の教授がガイドを買って出たが,教授は,惑星文化への影響を最小限とするために,偵察艦ではなく,エアラフトを使用することを主張した.教授が言うには,その南約15kmのところに集落があり,近くの外輪山の一角には前進観察キャンプもあるとのことだった.偵察艦の後部ハッチからエアラフトが引き出され,装備が積み込まれた. 携帯型発電機,各種探査機器,工具セット,食料1週間分,非常食1週間分,飲料水,水分凝結器,シェラフ,それぞれを金属製の0.1tコンテナに効率良く詰め込み,エアラフトの荷台に,荷崩れしないように押し込めた. 武器はオートライフルが3丁,9mmSMG 3丁,9mmオートピストル5丁,それに予備弾薬として1丁につき弾装10個を用意した.全員が砂漠用クロース・スーツを着込んだ.これは砂漠用スーツの偵察局仕様の強化型で,この星の環境とローテクの武器に対しては有効なはずだった. 調査チームのメンバーはハンチ隊長,教授,探査機器の責任者であるスラーブ,護衛としてメイスである.ケッシュは,偵察艦に残りたいと希望して,メンバーの反応を観察した.教授は,人数は多い方がよい,危険は少ないと同行するように強く主張した.また,ハンチ隊長も艦に詳しい人間を同行させたいと賛意を表明した.ケッシュは頷くと,参加の意思を表明した. 夜明け前に,エアラフトは飛び立った.全員がエアラフトの窓から双眼鏡を構え,この惑星の最も重要な危険因子,体長4mの肉食鳥タリーを警戒する.エアラフトは何度か進路を変えながらタリーの群れを避け,かつ現地人達の居留地から慎重に距離をとり,不時着現場に到着した.
偵察艦は砂漠の真ん中に不時着していたが,大きな破孔が幾つか穿たれており,船体の下半分は土の中に没していた.ハンチ隊長があれこれと指示を出した.無口なスラーブはそれには従わず,勝手に機材をエアラフトから降ろしはじめた.教授はハンチ隊長にとりいるように色々と解説を始めた.ケッシュがオートライフルを構えて見張りに立ち,メイスはSMG構えると船内の捜索に入った. ケッシュはスラーブの作業を手伝いながら,警戒を続けた.気が付くと肉食鳥タリーが一匹旋回している.斥候だ.データベースによれば,奴らは十分に観察してから仲間を呼び寄せる習性がある.ケッシュは望遠サイトで射程距離を確認すると2度の狙撃で叩きとした.銃声を聞きつけたハンチ隊長が顔をしかめて近寄り,次からは許可を得てから撃てと厳しく叱責した. メイスが船内の安全を確認すると,全員で共用室に必要機材を運びこみ,本格的な調査を開始した.調査は,ハンチ隊長,スラーブが担当した.メイスとケッシュは交代で見張りに立つことにした. 墜落原因に関してたいした情報は得られなかった.船内は荒らされており,心の中で恐れていた乗員達の死体は見つからなかった.ブラックボックスや携帯端末が紛失しているため,どのような状況で墜落したのかは不明であった.船内コンピューターは火で炙られていて,とてもメモリーが復旧できるような状態ではなかった. 船内に現地人の衣装の切れ端や土器などが散見されたことから,船内の荒らされようは彼らの仕業と思えたが,教授が文化汚染だと偵察局を非難しているのはともかくとして,現時点では断定はできない. ケッシュは見張りの合間に,一行の目を盗み船長室に忍び込んだ.この偵察艦はケッシュのタイプと同じだ.そしてもしこの艦が運用部保安課の息がかかっていれば,ケッシュの艦と同様にちょっとした改造が船室にほどこされているはずだ. ベッドの下,注意して携帯型センサーを当てると,やはり秘密金庫の開閉センサーが埋め込まれていることが分かった.ケッシュはスラーブを呼びに言った.
■■■ 4 ■■■ 低く唸る反重力エンジンの音を耳が微かに捉えた.ケッシュは跳びおきてコンタクトレンズに表示された蛍光オレンジの時刻表示をみた.頭が目覚めるより先に体が反応した.ケッシュは,シェラフの傍のオートライフルを掴むと船体の破孔から船外へと躍り出た.外は薄明で,シチュエーションが違えば見とれてしまうような壮大な眺めだったが,ケッシュの目は飛び去るエアラフトを追っていた. 後ろからメイスとハンチがやってきてケッシュの横に並んだ. 「教授か?」とメイスが自問した. 「そうみたい」ケッシュは肯定した.見張りシフトは教授の時間帯だった. 「何か調査か?一言,断ってから行くべきだ.」ハンチ隊長は神経質な声で性善説にたった推測を述べたが,その意見には誰も賛同しなかった. 船内に戻ると,昨晩から秘密金庫の中に残されていた携帯端末の解読作業をしていたスラーブが,船長室で気絶していた.後ろから誰かに殴られたと語ったが,犯人は詮索するまでもなかった.携帯端末は無残に破壊されていたし,共用室の携帯型のパワージェネレーターも破壊されていた. 夕暮れになっても教授は戻らず,一行が砂漠の真ん中に置き去りにされた可能性は濃厚となった.そしてなんらかの形で教授が今回の事件に関与していることも. 翌朝は低く響くドラムの音で目が覚めた.ケッシュが破孔に立つと見張りにたっていたメイスが双眼鏡を渡してくれた.内臓されたコンピューターが焦点を合わせ,画像が200倍望遠に切り替わった.カラフルに着飾った戦士達が雄たけびをあげていた.彼らは,手に手に武器と思われるものを携えていた. 「少なくとも友好的には見えないわね.」 メイスが静かに注視すべき位置を教えてくれた. 「あの山頂の下あたりをみてくれ.」 そこには,6つ足の馬に跨りカラフルな装具と槍で完全武装した戦士がいた. 「戦士が一人くるわ.完全装備.」 後からやってきたハンチ隊長が,双眼鏡を奪い覗いた.彼は,暫く考えた後,現地人と接触を試みて移動手段を手に入れる,と夢のような主張をした.メイスとケッシュは,その非現実的な構想を否定し強く引きとめたが,ハンチ隊長は強引に出て行ってしまった. ハンチと戦士は,船から400mほど離れた場所で向き合った.ハンチは,大げさに両手を広げて友好な態度を示した.戦士は,馬上から長槍を一閃させ,ハンチ隊長の首を切り落とした.戦士は転がった首を槍で串刺しにすると群れの方に去っていった.肉食鳥タリーが数羽舞い降り,ハンチ隊長の残りを持ち去った.
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